2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19730067
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
金子 敬明 Chiba University, 法経学部, 准教授 (80292811)
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Keywords | 民事法学 / 相続 |
Research Abstract |
本研究の主たる対象はフランスにおける夫婦財産制であるが、比較参照のためにイングランド法をも研究の対象としていること、「研究の目的」に記したとおりである。平成19年度には、その前半に研究代表者がイングランドに滞在していた関係で、「研究実施計画」に記載した通り、イングランド法における夫婦の財産関係を検討した(検討の際には、法制審議会(Law Commission)が2006年5月に出した中間試案報告書がきわめて有用であった)。さて、イングランドでは基本的に夫婦は独立に財産を所有しており、婚姻中に取得した財産であっても、コモンロー上の権原(legal title)は一方のみにあるとされることが少なくない。このときに、配偶者間の合意によって、エクイティ上の利益(equitable interest)を割合的に分けあうことも可能であるが、夫婦という関係の性質上、そのような合意が詰められないままにされることもしばしばである。このような合意がなされなかった場合に、コモンロー上の権原を有しない方の配偶者にエクイティ上の利益を認めてやるために諸種の判例法理が蓄積されている。イングランド法とフランス法との比較は平成20年度以降の研究にゆだねざるを得ないが、日本法と比較した場合には、イングランド法は、それらの法理を活用することで、コモンロー上の権原を有しない方の配偶者により広範な救済を与えているといえる。もっとも、これら法理により救済できる範囲は基本的に散発的であり、諸法理は全体として統一が取れていない、ということは否めず、日本法への移入・活用は困難であろう。
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