2007 Fiscal Year Annual Research Report
情報の帰属と流通・利用をめぐる民事法的規律のあり方
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19730073
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
岩藤 美智子 Okayama University, 大学院・社会文化科学研究科, 准教授 (70324564)
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Keywords | 情報格差 / 情報の所有 / 情報請求権 / 情報取得利益 / 秘匿利益 |
Research Abstract |
平成19年度に行った研究の概要は以下のとおりである。(1)ドイツ法における情報請求権・情報提供義務当該問題についてのドイツの判例・学説を検討することを通して、具体的な請求権・義務の存否は、当事者の情報取得利益と秘匿利益(プライバシー、刑事訴追可能性、営業秘密、第三者に対する守秘義務)との利益衡量によって判断されること、その際、当事者間の法律関係の性質と、当該情報が果たす機能に応じて異なる規律が妥当することが明らかになった。(2)信認関係法理と当事者間の情報等の格差への対応アメリカの第三次信託法リステイトメントの規律を検討することを通して、客観的に利益相反に該当する行為が行われたことが示されれば、それ以上の調査は行われることなく、原則として忠実義務違反と判断されるという規律(no further inquiry rule)が受託者と受益者との間の情報格差がある状況の下で、受託者の行為を適正なものとし、受益者による責任追及を実効性あるものとする機能を果たすことが明らかとなった。これを手がかりとして、我が国における新しい信託法の規律内容について検討し、受託者と受益者との情報格差への対処のあり方を、証明責任規範についても含めて考察した。さらに、一方当事者が優越的な立場にあることを利用して、他方当事者の意思決定等に介入する場合を規律するものとして、英米における不当威圧(undue influence)の法理や強迫(duress)の法理、さらに、非良心的取引の法理(unconscionable bargain)について考察を加え、契約内容の不当性とは区別される手続的な不当性の問題と原状回復的な救済の関係について検討した。
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