2007 Fiscal Year Annual Research Report
相続法における私的自治の原則および平等原理の再検討
Project/Area Number |
19730075
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
青竹 美佳 Kagawa University, 法学部, 准教授 (50380142)
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Keywords | 相続法 / 遺言 / 遺留分 / 私的自治 / 相続人間の平等 / 遺言の自由 |
Research Abstract |
平成19年度の研究計画においては、相続人間のひょう平等を、ドイツおよびイギリスの相続法原理を検討することにより解明するということであった。同研究計画は、計画調書の提出後早く進み、平成19年2月3日の京都大学民法研究会での報告「遺留分事件の弾力的解決について-ドイツの遺留分とイギリスの家族供与を参考にして」及び同年3月刊行の香川法学26巻3・4号掲載の「相続法における権利の弾力性について」の完成にて完結した。そのため平成19年度には当初平成20年度以降の計画として記載していた、遺言者の私的自治の問題に焦点を当てて研究を進めることとなった。研究計画で示した遺言者の私的自治をめぐる問題のうちで、本年度は特に民法総則の錯誤無効の規定が遺言に適用されるか否かの問題を取り上げた。遺言において錯誤が問題にある場合には、とりわけ既になくなった遺言者の真意と表示の不一致をどこまで法律上考慮すべであるかということ、つまり死者の意思をどの範囲で尊重すべきであり、その際受遺者の利益をどのように評価すべきであるかということが問題となる。また、錯誤論で主に検討の対象とされる契約における意思表示の錯誤の場合とは異なり、単独行為である遺言においては相手方の信頼保護への配慮は問題にならないのではないか、という遺言法特有の問題が生きずる。そこで、本研究では遺言について特別の錯誤規定を持つドイツ民法を手がかりとして、そこで追求されている理論、判例の動向をできるだけ詳しく紹介した。その結果、遺言のような単独行為では遺言者の意思を尊重さえすればよく相手方の信頼保護は問題とならないという一般的理解には再検討の余地があることが明らかになったる。研究の成果は平成十九年6月9日の日本公証法学会において「遺言における錯誤無効について」のテーマのもとに報告した(早稲田大学)。その後、同学会にて諸研究者に指摘された点を踏まえて特にドイツにおける錯誤に基づく取消しをめぐる学説を再検討した上で論文「遺言における錯誤無効について一遺言書作成後に生ずる出来事をめぐるドイツ錯誤論」を完成し、公証法学37号に公表した。
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