2007 Fiscal Year Annual Research Report
株式会社の資本構成と株主有限責任制度の弊害・条件及び倒産法制との関係について
Project/Area Number |
19730078
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
後藤 元 Gakushuin University, 法学部, 講師 (60361458)
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Keywords | 株主有限責任 / 過少資本 / 法人格否認 / 法と経済学 / 会社法 / 倒産法 |
Research Abstract |
平成19年度は、まず過少資本による責任を主張していた米・独の学説を分析し、これらが、株主による会社の搾取、株主による債務負担の表示、株主による失敗に終わるリスクの高い事業や事故発生の可能性が高い危険な事業の実施といった具体的問題点の解決を目指していたということを明らかにした。そして、最後の問題点について、法と経済学の知見を参考に、株主有限責任制度の存在による株主の事業運営に関するインセンティブの歪みという観点から、資産代替と不法行為コストの外部化の問題として整理した。 このようなインセンティブの歪みは、有限責任制度の弊害であり、何らかの方法で対処することが望ましい。そこで、まず融資時のコベナンツや人的保証の利用、強制責任保険制度といった手法による対処の可能性を検討したが、これらには限界もあることが明らかになった。以上の対処法を補完するためには、解釈論によって事業内容の決定に関与した株主に会社債務についての責任を課す必要があり、その際に考慮すべき諸要素について整理・検討を行った。他方で、今日では有限責任制度が社会において一定程度受容されており、またその拡大が政策的に推進されている。このような傾向に対する批判はもちろん可能であるが、そのような政策をある程度受け入れた上で調和を図るという方向性も理論上は存在する。本研究では、特に不法行為債務に関する責任について、議論喚起の意味もこめて後者の方向性も検討した。
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Research Products
(3 results)