2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19730080
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
清水 真人 Waseda University, 法学学術院, 助手 (30434228)
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Keywords | 商法 / 金融法 / 証券法 / 企業組織法 |
Research Abstract |
本年度は1930年代米国において独立取締役制度の必要性が唱えられた背景および1940年米国投資会社法の制定経緯につき研究を行った。 独立取締役制度の必要性が唱えられた背景には州会社法の規制緩和競争により認められるようになった様々な金融手法に対する当時の主要論者による警戒感が存在する。すなわち、会社経営者および支配株主である投資ファンドが州会社法で認められた権限を濫用することにより一般投資家の投資価値が一方的に大きく侵害され、その結果、多数の一般投資家が少数の人間に従属する事態が恐れられたのである。このような状況は米国資本主義を支える理念である個人の創意工夫・競争・機会の平等に反するものであることから、これらの権限行使を適正ならしめるため、一般投資家を代表して独立の立場から監督する機関の必要性が唱えられた。そのような考え方が1940年投資会社法の独立取締役制度として投資会社のガバナンスに導入されたのである。 1940年投資会社法においては独立取締役制度が導入されたのみならず、一連の行為規制の制定により、州会社法で認められている金融手法の多くが否定されているという点にも注目しなければならない。これらの行為規制と独立取締役制度が相互に連携することにより、投資会社へ出資を行う一般投資家の利益が確保され、さらには投資ファンドによる会社支配が防止されているのである。これらの行為規制の意義と独立取締役制度との関連についてはさらに研究を進めていきたい。 わが国においても一連の商法改正・新会社法制定・新信託法制定により当時の米国と同様の金融手法が可能となっている。そこでこれらの権限濫用に如何に歯止めをかけていくかがわが国でも同様に問題となるものと思われる。そこで米国における独立取締役制度の展開をさらに研究することにより、これからのわが国の資本市場法制・企業法制のあリ方を考えていきたい。
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