2007 Fiscal Year Annual Research Report
情報の流通・媒介に関する民事ルールの構築〜配信サービスの抗弁を素材に
Project/Area Number |
19730081
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
三枝 健治 Waseda University, 法学学術院, 准教授 (80287929)
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Keywords | 情報 / 名誉毀損 / 著作権侵害 / インターネットプロバイダー |
Research Abstract |
社会の情報化に応じて、「物」を規律対象とする現行民法から「情報」を主な規律対象とする新たな民法へと民事法ルールを展開させるという大きな研究構想の下、情報の流通・媒介に関するルールの構築を目指すのが本研究の課題である。情報の流通・媒介の場面として、具体的には、本年度は、(1)ネット上の掲示板に他人の名誉を毀損する情報が書き込まれた場合と、(2)著作権を侵害する情報が書き込まれた場合を取り上げ、それらの場合の掲示板運営者の責任に焦点を絞っ研究を進めた。これらのケースは下級審判決が多く、議論が豊富であるから研究の出発点としては最適と考えたからである。まず(1)(2)に関連する下級審判決を収集・分析したところ、そこで適用されるプロバイダー責任制限法の特質、すなわち掲示板運営者=情報の流通・媒介者の責任を「制限」するという特質が、何に由来するものか明らかにする必要があることを確認した。かかる責任制限は、一方で、流通・媒介行為の対象が物でなく、情報であるという点に由来すると考える見解、他方で、対象が物であれ情報であれ、問題になっているのが流通・媒介行為であるという点に由来すると考える見解があり得、そのいずれによるかで情報の流通・媒介者の責任のあり方が異なりうる。そこで、この解明に向けて参照したのがアメリ力法である。アメリカでは、(1)について通信品位法(Communications Decency Act)、(2)についてデジタル・ミレニウム著作権法(Digital Millennium Copyright Act)という特別法を制定しており、我が国と同様、これらの特別法が一般法である民法との関係でどのような点に特質が認められ、また、それがどう理論的に説明づけられうのか、議論が見られる。目下、その検証作業を進めている段階で、この点も含め、来年度、具体的成果を公表する予定である。
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