2008 Fiscal Year Annual Research Report
情報の流通・媒介に関する民事ルールの構築~配信サービスの抗弁を素材に
Project/Area Number |
19730081
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
三枝 健治 Waseda University, 法学学術院, 准教授 (80287929)
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Keywords | 情報 / 名誉毀損 / 著作権侵害 / インターネットプロバイダー |
Research Abstract |
本研究は、インターネット上の情報流通・媒介行為者たるプロバイダーの法的責任について日米法制を比較検討し、それを手がかりに、情報化社会の下での情報の流通・媒介に関する新しいルールを構築することを目指すものである。プロバイダーの責任が追及されるのは、流通・媒介した情報が(1)他人の名誉を毀損するものである場合と、(2)著作権を侵害するものである場合と考えられる。日本では、いわゆるプロバイダ-責任制限法が同一の規定により、(1)(2)問わず、プロバイダ-に故意又は重過失があるときに限り責任を負うとして、情報の流通・媒介の促進に配慮をしている。同様の配慮を見せるアメリカ法を詳しく調査した結果、他方アメリカでは、(1)については通信品位法(Comunications Decency Act)230条、(2)についてはデジタル・ミレニウム著作権法(Digital Millennitmi Copyright Act)512条がそれぞれ異なる規定を用意していること、また、後者は、日本同様、故意又は重過失がない限りプロバイダーは免責されるとするのに、前者は、同条(c)項(1)号の解釈問題として、プロバイダ-の責任をその主観的態様の如何を問わず常に免責するとしたZeran v. America Online判決が一般に踏襲され、今や(1)では(2)以上に情報の流通・媒介を促進する結果となっていることを確認した。そして、このようなアメリカにおける(1)(2)の取り扱いの違いが何によるのかを分析したところ、問題情報の元々の発信者と被害者との紛争からプロバイダーが解放される制度的担保があるか否か等がその要因となりうること、(1)(2)で扱いを異にする現行法制に批判的な見解が近時強まりつつあり、注目されること等を指摘した。以上の成果は、新しい判例の動向の紹介と併せ、研究論文に早々にまとめて公表する予定である。
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