2008 Fiscal Year Annual Research Report
扶養の権利・義務の明確化に関する研究-公的扶助制度との協働を目指して
Project/Area Number |
19730084
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Research Institution | Tezukayama University |
Principal Investigator |
冷水 登紀代 Tezukayama University, 法政策学部, 准教授 (50388881)
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Keywords | 民法 / 私的扶養 / 公的扶助 / ドイツ法 |
Research Abstract |
本年度の目的および計画は、(1)私的扶養制度と公的扶助制度の原理面での探求を行うことと、(2)自治体等への実態調査を行うことであったが、10月12日に行われた私法学会個別報告にて、「私的扶養制度と公的扶助制度の競合と調整-ドイツ法の取組みと議論を手がかりにして」と題して、報告し公刊する機会を得た(8月30日には、京都大学民法研究会にて準備報告)ため、(2)については、学会報告後に行うことにした。ここでの報告内容は、本研究の核心部分となる研究成果となりうると判断したからである。 この報告で明らかにできたことは、私的扶養制度と公的扶助制度との制度設計が同じ理念に支えられていながら、生活保護制度の運用面において民法上の扶養を優先させ、国家による個人・家族の生活領域への介入が消極的な結果、扶養の権利が守られず義務も果たされないという結果を招いている日本法に対し、「社会国家」として国家が積極的に介入し個人の困窮状態の解消し、社会と家族の負担の調整をしているドイツ法の取組みについてである。そして、ドイツ法では制度を支える理念に従い困窮者の権利、扶養義務者の義務の限界が明確化されているからこそ、上記の調整が可能となったということが裏付けられ、日本法における問題解消のための示唆が得られたと思われる。 11月以降は、当初予定していた通り自治体調査のアンケートの準備を行った(ただし、実施は、担当者の大学移籍という予定外の事情が生じたため、2009年4月以降に行う予定に変更)。
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