2009 Fiscal Year Annual Research Report
扶養の権利・義務の明確化に関する研究-公的扶助制度との協働を目指して
Project/Area Number |
19730084
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Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
冷水 登紀代 Konan University, 法科大学院, 准教授 (50388881)
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Keywords | 民法 / 扶養 / 公的扶助 / 生活保護 / 介護 |
Research Abstract |
本研究の中心的課題である、扶養の権利・義務の明確化と公的扶助との協働可能性に関する課題は、前年度までにドイツ法と比較し、その取組みが日本法に与える影響の可能性を検討してきた。ところで、ドイツでは社会扶助主体から扶養義務者に対して先行して行った給付の償還請求がされるため、扶養は金銭的なものを前提として制度が構築されていた。これに対し、日本法での扶養の方法に関する通説的見解は金銭・引取を前提とするため、自治体が先行して生活保護を給付せずに、扶養を指示する傾向があるのではないかと思われた。これらの疑問を踏まえ、本年度は、研究計画において前年度までにやり残していたわが国の実態調査を、自治体(大阪府下・兵庫県下の全自治体)を対象にしてアンケートで行い、対象自治体の生活保護行政の取組みを確認した(結果、生活保申請者数と受理決定者数に大きな乖離はなく、扶養義務者等がいることを理由に申請却下がされていることはほとんどなかった。また、扶助の方法は、生活費のみならず、医療・介護・住居扶助・教育等であった)。2月にはこれまでの成果をもとにドイツを訪問し、高齢時の生活保障・介護の負担の問題を各大学の先生方にインタビューをする機会を得た。 これらの研究結果を踏まえ、わが国において扶養の権利義務が不明確なために生じている具体的問題点を想定し、3月20日(土)に関西家事事件研究会で報告(「精神障害者の不法行為と近親者の責任」)し、実務家の先生方からもご意見を頂いた。これについては近日中に公刊できるよう現在準備中である。また、この報告では、成年後見人の療養監護義務と比較することにより、扶養・引取扶養・介護に関する位置づけに迫ることができた。 本年度において、当初目的とした成果は一応達成されたと思われるが、今年度の研究で新たに研究を重ねるべき問題点がみつかった。
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