2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19730086
|
Research Institution | Kagoshima National College of Technology |
Principal Investigator |
松田 忠大 Kagoshima National College of Technology, 一般教育科文系, 准教授 (60300620)
|
Keywords | 船舶衝突法 / 不法行為法 / 消滅時効 / 起算点 / 過失 / 因果関係 / 立証 |
Research Abstract |
本研究は、(1)船舶衝突事件における「過失」及び「過失と損害との因果関係」の立証のあり方、(2)船舶衝突債権の消滅時効の起算点の解釈の問題を課題に据え、船舶衝突法の一般不法行為法に対する独自性を探ることを目的とする。船舶衝突を規律する国内法たる商法の規定には不備な点が多い。よって、本研究を遂行することは、裁判実務および海運実務、将来の船舶衝突法制の検討に関して重要な意義を有する。本年度は、前年度までに収集した資料を用いて、(1)の検討および研究の総括の総括を中心に行った。(1)については、比較研究の対象としたアメリカおよびイギリスでは、船舶衝突事件においては、ペンシルベニア・ルールや独自の立証原則、prima facie case of negligence法理などの適用により、立証の困難さを回避するとともに迅速な事件解決を図っている。また、(2)の時効の起算点の問題についても、特にアメリカにおいては、権利失効の法理に基づき、原告が、衝突時より起算して、合理的な期間内に訴えを提起したかどうかが問題とされるだけで、たとえば、衝突の相手船不確知といった問題もここに包摂されるものと考えられる。このような比較法的な検討を背景として、現代の船舶衝突法においては、当事者間の損害の公平な分担というよりもむしろ、商取引の分野における問題の迅速かつ画一的な解決が優先されるべき場合もあると考えられることから、船舶衝突法における法の不存在を、民法の一般不法行為法の原則によって補うのではなく、船舶衝突の実態に沿って、独自の解釈が確立させる必要性があるとの結論に至った。すなわち、立証責任の問題については、英米法を参考に、立証責任の転換を必要に応じて行い、また、時効の起算点の解釈についても、衝突時とすべきであり、この領域では、被害者保護の要請を優先させるのではなく、迅速な問題の解決を基礎とした解釈論を展開すべきである。
|