2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19730089
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
村井 麻衣子 University of Tsukuba, 大学院・図書館情報メディア研究科, 講師 (80375518)
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Keywords | 著作権法 / 制限規定 / 著作権の制限 / フェア・ユース / fair use |
Research Abstract |
本年度は、主にアメリカ著作権法における著作権制限規定の一般条項であるフェア・ユースに関する文献の購読及び検討を行った。フェア・ユースの経済的な分析により提唱された「市場の失敗」理論は、広く知られるようになり、その理論を採用したとみられる判決も登場した。しかし、後に理論の提唱者であるGordon自身は、本来の意図と異なる形で市場の失敗理論がとらえられているとして、市場の失敗のカテゴリーを二つに分類することで理論のさらなる精緻化を試みている。Gordonの立場は、権利者の利益だけではなく利用者の利益も重視し、また非金銭的価値を重視する方向へ変遷してきていると考えられる。 インターネットなどにおける技術的な発展や集中処理機関の普及により、私人が行うことのできる様々な行為にまで著作権が及びうるようになった現代においては、著作権制限規定の重要性が増大しており、その意義を解明することが求められている。本年度行った研究は、著作権制限規定について理論的な位置づけを検討するうえで、重要な示唆を提供すると考えられる。 今後は、著作物利用に関わる非金銭的価値に焦点を当て、表現の自由に配慮した議論や、その問題の一端としてパロディの著作権侵害に関連する事例や議論を検討したいと考えている。 なお、本年度の研究成果の一部については、知的財産研究所によるIIP研究論集『デジタル・コンテンツの保護・流通のあるべき姿(仮題)』(近刊予定)に掲載予定の「フェア・ユースにおける市場の失敗理論とその修正-著作権制限規定の現代的意義-」にて発表する予定である。
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