2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19730089
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
村井 麻衣子 筑波大学, 大学院・図書館情報メディア研究科, 講師 (80375518)
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Keywords | 民事法学 / 知的財産法 / 著作権法 / 制限規定 / フェア・ユース / fair use / 著作権 |
Research Abstract |
今年度は、本研究課題の最終年度にあたることから、主に、これまでのフェア・ユース(米国著作権法における著作権制限の一般条項)に関連した研究をもとに、日本著作権法における著作権制限規定の検討を行った。 (1)「フェア・ユースの市場の失敗理論」を踏まえ、研究・教育目的など、広く社会に利益をもたらす目的でなされる著作物利用に関する制限規定に着目して研究を行った。その成果の一部として、「図書館における複製(日本著作権法31条)」を中心とする検討については、知的財産法研究会(北海道大学)にて報告を行う機会を得ることができた。 (2)私的複製(日本著作権法30条)の制限規定を検討し、零細な利用を許すというだけでなく、私的領域での行動の自由の確保やコミュニティの醸成といった意義があることの検証を行った。関連して、本来私的複製とされる著作物利用行為を行うためのシステムを提供する者の責任の可否について、いわゆる著作権の間接侵害の成否が問題となった事例の検討を行い、その成果の一部は、TVブレイク事件の判例評釈として公表することができた。 本研究課題では著作権の制限規定に関する研究を行ってきたが、この研究を進めていくなかで、著作権が制限されるべき領域を明らかにするとともに、その領域を踏まえた上で、著作物利用の前段階など取引費用の低い場面等に著作権を行使するポイントを設定していくことにより、現代著作権制度が抱える課題を解決できる可能性があるのではないかとの視座を得ることができた。本研究課題の成果の全体は今後公表していくとともに、その成果をもとにしたさらなる研究につなげていきたい。
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