2007 Fiscal Year Annual Research Report
中国環境訴訟の研究:司法過程に見られる被害救済の阻害要因について
Project/Area Number |
19730092
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
櫻井 次郎 Nagoya University, 大学院・国際開発研究科, 助教 (40362222)
|
Keywords | 環境訴訟 / 公害訴訟 / 環境問題 / 中国 / 環境法 / 環境政策 |
Research Abstract |
本研究の目的は、中国の環境訴訟における被害救済の阻害要因について、訴訟準備段階から判決の執行に至る全ての過程を対象として検討し明らかにすることにある。3年の研究機関の1年目であたる本年は、判決の執行段階にある福建省寧徳市の環境訴訟、現在訴訟準備中の広東省韶関市のケースについて調査し、考察結果をまとめた。 福建省寧徳市の環境訴訟については、2005年11月の二審判決で汚染被害に対する損害賠償と汚染の差止命令が出たにもかかわらず、その判決の執行が滞っている。この訴訟については一審判決の前から現地調査を進めており、本年度も07年8月と08年3月に現地調査を実施した。その結果、判決の執行が困難な理由として、差止命令の対象となる行為を特定しなかった判決そのものの問題点、判決の執行状況のフォローに関する司法制度上の問題点、判決の執行に政治的介入が入る問題点などが明らかとなった。これらの考察結果については、北川秀樹編著『中国の環境問題と法・政策』(法律文化社,2008年3月)の第5章「環境公害訴訟の事例研究-福建省寧徳市屏南県のケース」において公表した。 次に、広東省韶関市のケースについては、07年8月に現地調査を実施すると同時に、訴訟代理人となる予定の弁護士への聞き取り調査および学術誌などの資料収集を行った。その結果、この地域では大宝山鉱山における採鉱、選鉱および鉱物の精錬の過程で発生する鉱毒水の影響で健康被害が発生していること、このため地元の10の村が陳情活動を行っていてそのうちの1つの村についてのみ飲用水確保のための救済措置がとられていること、そして救済措置がとられていない被害の最も著しい村において訴訟が検討されていることが明らかとなった。この調査・検討結果については、2007年12月発行の「中国広東省大宝山鉱山周辺の鉱害問題」環境と正義106号において公表した。
|