2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19730095
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
今村 哲也 Meiji University, 情報コミュニケーション学部, 講師 (70398931)
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Keywords | 著作権 / 保護期間 |
Research Abstract |
平成20年度は、初年度に収集した資料の分析の他、引き続き、追加的な資料収集とその分析とを行った。既に公表した本研究の考証の結論では、保護期間の問題について、その有限性の側面については、一定の規範的原理を提示しうるものの、固定期間モデルの在り方とその期間の拡大傾向の側面については、固定期間モデルの登場した沿革や欧米における保護期間の拡大とハーモナイゼーションの連鎖状況に鑑みると、経済的な実証研究の成果や公共選択論などのような多角的な視点によって説明することが適切であり、何らかの規範的原理のみを基礎とした理由から結論づけることは困難であることを示唆した。なお、保護期間の延長が社会厚生を必ずしも高めていないことを具体的に示すPaul J Heald教授の実証研究論文について、著者の許諾を得て、書籍の形式で出版している。 海外調査では、著作権関係のワークショップや国際会議に参加し、関連する課題についての資料収集と意見交換を行った。特に、これまでの本研究による示唆から、本年度はより幅広いアプローチによってこの問題を考察するべき必要性を感じたため、(1) IPR Universitv Center and the INNOCENT Graduate Schoolが開催した「One Right System For IP-Vision Impossible? 」と題する国際会議に出席し、知的財産権制度の将来の仕組みを検討する上での多角的な考察方法について資料を収集するとともに、(2) Nottingham大学が開催した「Preserving and accessing our cultural heritage-the role of copyright law, digitisation and the Internet」と題する国際会議に出席し、過去の著作物の保存とアクセスという観点から様々な知見を得た。 これらの考察を通して、著作権政策を検討する上で、条約上の各国の法政策の許容範囲を、法理論的に説明しておく必要があることを感じたため、次年度以降の課題として、条約との関係で保護期間それ自体の問題よりは相対的に自由な制度設計が可能と思われる権利者等不明著作物(いわゆるOrphan works)の利用の在り方に関する総合的な研究を展開するという、新たな研究の方向性を定めるに至つた。
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