2007 Fiscal Year Annual Research Report
第二帝政期ドイツ自由主義の政治構想とその現代的意義ーギールケからプロイスへ
Project/Area Number |
19730098
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
遠藤 泰弘 Hokkaido University, 大学院・法学研究科, 助教 (30374177)
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Keywords | 政治思想史 / 政治学 / ドイツ公法史 / ドイツ近代史 / ドイツ / ギールケ / プロイス / ドイツ自由主義 |
Research Abstract |
第二帝政創立期ドイツの政治構想について、オットー・フォン・ギールケの国家論を中心として、詳細な分析を行った。具体的には、同時代の支配学説を唱えた国法学者パウル・ラーバントとギールケとの間で繰り広げられた連邦国家論争を同時代の文脈において詳しく跡づけるとともに、ワイマール期からナチ期にかけて活躍した政治学者カール・シュミットの連邦論と比較することにより、従来の第二帝政期評価を根本的に修正することに成功した。すなわち、「不決断の所産」という「中途半端さ」を消極的に強調するシュミットの第二帝政理解に対して、積極的に「中途半端」に踏みとどまることを選択して複数の主権の担い手が存在するというドイツの現状に適合的な国家モデルを作り上げたギールケの議論を対置し、シュミットとは異なる仕方で第二帝政期の政治体制を理解することが可能であることを示した。本研究の試みは、マックス・ヴェーバーにより定式化され、カール・シュミットにも引き継がれた第二帝政に対する支配的な診断、すなわち第二帝政の政治体制には制度的な欠陥があり、ビスマルクという巨人の個人的技量に依拠しない限り巨大な官僚制を制御できなかったとする見解に対して、部分団体による決定とそれへの人民の参加を求めるギールケの多元的な意思決定モデルの有用性を対置し、ヴェーバーやシュミットが説いた「強力な指導者による統治」がはらむ問題点を浮かび上がらせようとするものである。以上の研究成果は、ギールケからフーゴ・プロイスに至るドイツ自由主義の評価を根本的に修正しようとする本研究課題全体の出発点を確保するとともに、今後の研究の方向性を定めるものである。
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