2008 Fiscal Year Annual Research Report
ブレア労働党政権期イギリスの対EU政策とEU共通社会政策の形成・転換に関する研究
Project/Area Number |
19730101
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
近藤 康史 University of Tsukuba, 大学院・人文社会科学研究科, 准教授 (00323238)
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Keywords | 構成主義 / イギリス政治 / EU / 比較政治 / 福祉国家 / 労働党 |
Research Abstract |
EU共通社会政策の形成過程と、それに対するイギリス・ブレア労働党政府のコミットメントの内容・効果について、とりわけ、1997年アムステルダム条約、2000年リスボン戦略、2004〜5年憲法条約、そしてイギリスが議長国を務めた2005年ハンプトンコート会議の過程を対象として、検討した。その結果ブレア労働党政府のEU共通社会政策へのコミットが、一方ではより国家の主権を守る「政府間主義」を維持・拡大し、他方では「アングロ・サクソン型モデル」に基づきつつ、効率と公正とのバランスを取る「第三の道」の経済・福祉改革をヨーロッパ・レベルで推進するという、その「建設的関与」の基本姿勢に貫かれたものであることを示し、プレア政権以後の対EU政策の転換を特徴づけた。また、その戦略の成果として、共通社会政策をはじめとしてEUの基本姿勢にも変化が生じつつあるが、完全に「EUのイギリス化」が達成されたとは言えず、現在のEUにおいては、公共政策レベルにおいても、また市民レベルにおいても、EUという統治システムの将来像や、経済・社会政策の方向性について、新たな紛争ラインが形成されている点について明らかにした。 同時に、分析枠組みである「構成主義の三層モデル」の理論についても、「構成主義」の理論的立場に立つ国内外の研究者との対話を通じて、コンフリクトや権力といった政治的特質を内包し、政治的制度との関連性もより意識したものへと見直しを図った。
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