2010 Fiscal Year Annual Research Report
初期近代ヨーロッパの絶対主義政治理論における古代政治学の継受の問題
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19730102
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
犬塚 元 東北大学, 大学院・法学研究科, 准教授 (30313224)
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Keywords | 政治思想史 / 絶対主義 / 人文主義 |
Research Abstract |
今年度の分析作業を通じて明確になった最大の成果は、絶対主義政治理論は人文主義の延長線上に(ないしは、その一つの変種として)思想史上の位置を与えられる、という知見であった。人文主義について、政治的人文主義というバージョンを媒介にして共和主義との関連を強調する国内外の通説的思想史理解は、人文主義についての思想史見取り図として一面的である。政治思想史における初期近代とは、人文主義的な方法・思想・態度が人口に膳表した時代である、というだけではない。それだけにとどまらず、ボダンやホッブズに即する限り、絶対主義政治理論は、むしろ人文主義の正統な継承者ですらある、と資料に基づいて指摘することが可能である。 また、こうした個々の思想系譜、思想家、テクストをめぐる成果とは別に、方法論的知見も獲得された。これまでヨーロッパ政治思想史研究においては、国内外を問わず、具体的な歴史叙述や歴史書を政治思想の一部門として扱うことについて研究者の関心が低く、またそのための研究方法論も未成熟だった。これに対して、本研究課題のなかで暫定的な結論として導かれた方法論的知見は、「政治思想としての歴史叙述」「政治思想における歴史叙述」と表現されるべき方法論的観点である。これは、初期近代ヨーロッパの政治思想においては具体的な歴史解釈と政治論が密接に関連していた、という認識を前提としているが、このことは同時に、人文主義・文献学が単に古代の政治思想の継受にはとどまらない思想史的意味をもっていたことを意味している。
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Research Products
(4 results)