2009 Fiscal Year Annual Research Report
初期近代ブリテンにおける「統合」と「帝国」の政治思想史
Project/Area Number |
19730110
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
木村 俊道 Kyushu University, 大学院・法学研究院, 准教授 (80305408)
|
Keywords | 初期近代 / ブリテン / 統合 / 帝国 / 植民 / 征服 / 文明 / 野蛮 |
Research Abstract |
本研究では、初期近代ブリテンにおける「統合」論および「帝国」論の系譜を解明するために、研究対象となる時代に応じて、作業の段階を3つのフェイズに区分している。すなわち、フェイズ(1):1603年「王冠の統合」以前、フェイズ(2):1603年から1707年の「政治統合」まで、フェイズ(3):1707年から1776年のアメリカ独立まで、である。 平成21年度においては、フェイズ(2)から(3)の作業が進められた。 前年度から引き続き収集した文献のなかで、昨年度中に検討を加えたものとして、バクルートの『航海記』、ジョン・ロックのアメリカ植民地論、フレッチャーをはじめとするイングランド・スコットランド統合論、ヒュームにおける征服批判、バークのアメリカ論等が挙げられる。また、アーミテイジ『帝国の誕生』、ロバートソン編『帝国への統合』(Union for Empire)、マキニス『統合と帝国』(Union and Empire)などの先行研究が併せて参照された。 こうしたなか、とくに17世紀から18世紀にかけてのブリテン政治思想史において、「対内的」な内乱や名誉革命のみならず、スコットランド統合やアメリカ植民地といった「対外的」な契機が果たした役割、および、それに伴う「統合」「帝国」「植民」「征服」、あるいは「文明」と「野蛮」をめぐる政治的言説の展開過程の一部とその重要性が明らかとなった。同時代の政治思想は、20世紀的な国民国家の枠組みではなく、あるいはまた、主権国家秩序を当然に前提するものでもなく、むしろ多元的・複合的な国家(=ブリテン)の現実に沿って展開されていたと考えられる。 なお、以上の過程で明らかになった「文明」論の諸相については、その成果の一部が、近著『文明の作法-初期近代イングランドにおける政治と社交』に反映されている。
|
Research Products
(1 results)