2010 Fiscal Year Annual Research Report
初期近代ブリテンにおける「統合」と「帝国」の政治思想史
Project/Area Number |
19730110
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
木村 俊道 九州大学, 大学院・法学研究院, 准教授 (80305408)
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Keywords | 初期近代 / ブリテン / 統合 / 帝国 / 植民 / 征服 / 文明 / 野蛮 |
Research Abstract |
本研究では、初期近代ブリテンにおける「統合」論および「帝国」論の系譜を解明するために、研究対象となる時期に応じて、作業の段階を(1)1603年の「王冠の統合」以前、(2)1603年から1707年の「政治統合」まで、(3)1707年から1776年のアメリカ独立までの3つのフェイズに区分した。 平成22年度においては、上記の(3)の作業を進めるとともに、全体の研究をまとめる段階に入った。また、それに加えて、初期近代ブリテンにおける帝国論の特徴をより明確に理解するため、同時代フランスの「普遍的君主政国家論」論やモンテスキューの連邦論、アメリカのフェデラリスト、あるいは19世紀以降の「大英帝国」論等との比較をあわせて行なった。 ルネサンスから18世紀にかけての「ブリテン」史はこれまで、「内乱」や「革命」の時代として理解されてきた。また、その一方で、20世紀的な「国民国家」を単位とした従来の思想史研究からは、「統合」や「帝国」の思想史は見逃されてきた。しかし、以上の作業によって、初期近代ヨーロッパにおける「統合」や「帝国」の政治思想が、マキァヴェッリに由来する人文主義的な政治論や、スコットランドとの統合問題、そしてアメリカをはじめとする植民地の拡大を契機として展開され、それがまた「多元的」「複合的」国家としての「ブリテン」の世界認識やアイデンティティーの形成に大きな影響を与えたことを明らかにすることができた。また、これと関連して、同時代の「文明」(「野蛮」)観、そして19世紀以降の「大英帝国」につながる思想的な系譜も見出すことができた。 その成果の一端は、2010年9月の「政治概念の歴史的展開」研究会および11月の九州大学政治研究会で報告されたが、さらに、2011年5月に刊行予定(印刷中)の古賀敬太編『政治概念の歴史的展開』第4巻の「帝国」の章において発表される。
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Research Products
(2 results)