2007 Fiscal Year Annual Research Report
韓国憲法の持続と変化:新制度論における制度的均衡と均衡制度の観点から
Project/Area Number |
19730111
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Research Institution | Yamaguchi Prefectural University |
Principal Investigator |
浅羽 祐樹 Yamaguchi Prefectural University, 国際文化学部, 講師 (70403912)
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Keywords | 憲法 / 韓国政治 / 新制度論 / 制度的均衡 / 均衡制度 |
Research Abstract |
本研究は韓国憲政史における歴代憲法の持続と改正について新制度論における制度的均衡と均衡制度の観点から実証的に解明しようとするものである。まずは理論に重点を置くという所期の計画に従って,平成19年度は新制度論における制度的均衡と均衡制度の最新の理論的成果の吸収に努め,韓国という事例への適用可能性を検討した。 一方で,制度はインセンティブ付与を通じて,アクターが自らの目的や利害を追求する玉で選択可能な手段や戦略を制約することで,アクターの行動や相互作用を構造化する(制度的均衡)。他方,制度はパレート最適なゲームのルールというよりもアクターによる暫定的な均衡戦略であるため,均衡が崩れると変化するものである(制度均衡)。つまり,憲法という制度は大統領や市民などアクターの行動パターンを律する独立変数として機能すると同時に,アクターによる政治変動の帰結として改正される従属変数でもあり,政治変動の契機になる媒介変数でもある。 韓国の場合,李承晩や朴正煕は憲法改正を行って権座にとどまろうとしたのに対して,金泳三や金大中は憲法改正を行わず所定の任期で退いたのは,前者が強欲な暴君ネロだったからであると一般には考えられているが,金泳三や金大中も李承晩や朴正煕と同じくらい強欲で,できることならば憲法改正を行ってでも権座にとどまりたかった暴君ネロだったが,そうできなかったのはなぜか,というパズルにして解くべきである。歴代憲法の持続性の差は,大統領と市民の遵法ゲームとして解けるはずであるということを確認した。 成果としては,広い意味の憲法システムに該当する選挙制度の政治的効果(制度的均衡)について日本選挙学会のアジア部会で英文で報告し,学会誌に掲載された.
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