2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19730113
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
塩出 浩之 University of the Ryukyus, 法文学部, 准教授 (50444906)
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Keywords | 自由民権運動 / ジャーナリズムと政治 / 東アジア国際秩序 / 日朝(日韓)関係 |
Research Abstract |
今年度の本研究では、征韓論政変(1873年末)以後、江華島事件(1875年9月)から日朝修好条規締結(1876年3月)にかけての日朝国交刷新問題をめぐる各新聞の論調を収集・分析した(『日新真事誌』『東京曙新聞』『横浜毎日新聞』『東京日日新聞』『郵便報知新聞』『評論新聞』など)。とりわけ、江華島事件直後から日朝修好条規締結までの各新聞のあいだで盛んに交わされた「征韓」「非戦」をめぐる論争について検討を加えた。 各新聞は政治的自由の拡大という課題を共有しながら、対外政策の次元においては「征韓」「非戦」の両陣営に二分して論戦を展開した。その過程は、公開の政治的コミュニケーションにおいて異論の並存をどう受け入れるかという、「公論」をめぐる慣習形成の過程でもあったと評価できる。政治の民主化と外交政策決定との相関という普遍的論点からも、重要な事例である。 また先行研究において、不平士族の処遇という問題がこの時期の「征韓」「非戦」論議を規程していたことはある程度指摘されているが、外交政策論議としての分析、特に江華島事件がもたらした「問罪」という選択肢の意味は充分明らかにされていない。本研究では、非戦論者よりも征韓論者のほうが政府の遣韓使節の意図(問罪=非戦→国交刷新)を正確に推測していたこと、また論争の展開を見ても争点が次第に「問罪」の是非へと推移していったことを見出した。 以上の論点を踏まえて、さらに分析を深めつつ論文を作成中である。
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