Research Abstract |
本研究課題は,(1)近代以降の第一次文献を中心に,政府・地方自治体・民間がいかに竹島を捉え,いかなる価値を付与してきたのかを考察し,(2)日韓会談文書の詳細な分析を進め,両国政府における「竹島の取り扱い」を明らかにし,(3)島根県の竹島を巡る動態を,島根県総務課所蔵文書を基に分析を進め,(4)上記の結果を補強・同定すべく,竹島周辺海域への出漁経験者に対する聞き取り調査を行い,(5)日本の朝鮮植民地期及び戦後の竹島周辺海域における日韓双方の漁獲量の推移を定量的かつ通時的に把握し,(6)(5)の時期の竹島周辺海域の漁業水域,操業ルール,出漁に纏わる各種制約・条件,出漁漁船の増減,トラブルの変化等を調査した上で,日韓両国の政府,地方自治体,民間の対応を明らかにすることを通じて,戦後の竹島の位相を明らかにし,「地域学としての竹島研究」の構築を目指すものである。 今年度は、主に(1)〜(6)までの分析・考察を進めるための基礎を築くべく,第一次文献の整理,日韓会談文書のレビュー,島根県総務課所蔵文書の収集と整理,国内(島根県庁,隠岐の島,鳥取県境港など)調査及び外国(韓国ソウル,浦項,欝陵島)調査を敢行し,所期の目的を達成した。 特に,資料収集では,従来検討に付された形跡がなく一般公開されていない島根県総務課所蔵文書の全部を収集することができた点,日韓漁業協定の改定にまつわる内部資料を入手した点に成果が大きく,これを分析することにより,(1)(3)(6)について有益な事実を抽出できることが予想される点に意義と重要性が見出せる。また現地調査では,竹島周辺海域を巡る日韓の漁業問題が必ずしも「竹島問題」に収斂されないことが,日韓両国の現地調査で確認できた点,竹島周辺海域での日韓双方の漁獲量に関するデータの所蔵先を特定できた点に成果が大きく,これにより現時点で可能な限りの(5)の目的を達成する見通しが立った点に意義と重要性が見出せる。
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