2009 Fiscal Year Annual Research Report
国連グローバル・コンパクトの展開――グローバル公共政策ネットワークの理論と実践
Project/Area Number |
19730131
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
三浦 聡 名古屋大学, 大学院・法学研究科, 教授 (10339202)
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Keywords | グローバル・ガバナンス / 国連 / グローバル・コンパクト / ネットワーク / 正統性 / 実効性 |
Research Abstract |
本研究の目的は、実証面では国連グローバル・コンパクト(GC)の構想から発展に至る過程を丹念に追うことであり、理論面では、GCをいかにとらえるかという問いに答えるための分析枠組みを構築することである。 平成21年度は、引き続き理論面と実証面の研究を進め、その成果の一部をまとめた論文を刊行した。論文では、実証的には近年におけるGCの動向を概観した上で、GCが制度的実験を重ねる過程で自発的イニシアティブからマルチモーダルなガバナンスのネットワークへと変容しつつあると主張した。 その上で、理論的には法学における「ニュー・ガバナンス論」などの知見を踏まえつつ、GCにおける「ガバナンス様式(modes of governance)」の類型化を試みた。すなわち、(1)第一者(GCへの参加企業・自社)による継続的改善と自主規制、(2)第二者(参加企業・他社)による「市場によるガバナンス」(私的契約レジーム)、(3)参加団体(実践共同体)による「共同体によるガバナンス」(社会的影響力、能力構築、文化変容)、(4)第三者(政府)による「階層の影」の下での「規制された自主規制」、(5)第三者(機関投資家)による「市場によるガバナンス」(社会的責任投資)、(6)第三者(NGO)による市民ガバナンス、(7)参加団体と不参加団体による協働学習、(8)以上のガバナンス様式に関するガバナンスであるメタガバナンス、という8類型を提示した。結論として、グローバル・ガバナンスにおけるGCの意義は、マルチステークホルダー、マルチイシュー、マルチレベル、マルチモーダルなガバナンスのモデルを形成しつつある点に見い出せることを指摘した。 平成22年度は、国連グローバル・コンパクトのうち環境保護に関する取り組みであるCaring for Climateの会議(於ジュネーブ)に参加し、会議の模様を観察した。
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