2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19730140
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中嶋 智之 Kyoto University, 経済研究所, 准教授 (50362405)
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Keywords | 最適金融政策 / ニュースショック / 担保制約 / 価格粘着性 / 景気循環 |
Research Abstract |
当該年度においては、まず、特に流動性の罠に陥る可能性のある状況において、国際経済における金融政策の協力の可能性とその意義についての研究結果をまとめ、それをJournal of the Japanese and International Economies誌に発表した。この研究は、まさに我が国が1990年代の後半以降直面してきた状態に関連するものであり、今後の金融政策の運営を考える上で意味のある研究であると言える。続いて、担保制約モデルにおいて、ニュース・ショックにより景気循環が生じる可能性についての研究をワーキング・ペーパーにまとめ、経済産業研究所のディスカッション・ペーパーシリーズに発表した。ニュース・ショックによる景気循環理論とは、将来に関する情報や期待、例えば、将来は現在よりも経済成長率が高まる(低まる)というような楽観的(悲観的)な期待によって、現在の経済活動の変動を説明しようとする理論である。そのような理論は、1980年代後半から1990年代にかけての、いわゆる資産価格バブルとその崩壊とそれに伴った長期的な景気の低迷を経験した我が国のマクロ経済を考える上で極めて示唆するところが多いものと思われる。我々の理論は、それまでのニュース・ショック・モデルが効用関数や投資の調整コスト関数を修正することに力点を置いていたのと異なり、担保制約に起因する金融市場の不完全性を強調している点が新しい。最後に、失業保険が不完全なために、失業が非自発的なものになるようなモデルにおいて、最適な金融政策の性質を調べ、その成果をワーキング・ペーパーにまとめた。そこでは、金融政策にとって重要なのは非自発的失業の存在自体ではなく、失業リスクのシェアの度合いがどう変動するかであることが示された。
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