2009 Fiscal Year Annual Research Report
家計における消費・貯蓄活動のマクロ経済的帰結としての資産格差とその厚生評価
Project/Area Number |
19730148
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
山田 知明 Meiji University, 商学部, 准教授 (00440206)
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Keywords | 動学的一般均衡理論 / 消費・貯蓄 / 社会保障 / 経済格差 / 数値解析 |
Research Abstract |
固有リスクが存在する多期間世代重複モデルを用いて、消費税及び資産所得税の導入よる社会保障制度改革が、政治的メカニズムも考慮した場合に実行可能であるかを分析した。本モデルの特徴は以下の通りである。各世代の家計が固有リスクに直面しているため、事後的に実現する勤労所得は家計間で異なる。そのため、資産及び消費格差が生じる。昨年度まで用いてきたモデルに日本の社会保障制度の特徴である二階建ての公的年金制度を導入し、家計行動と経済格差、社会保障制度改革の間の関係を考察した。本研究の特徴は、(1)世代間及び世代内の異質性がある経済モデルを用いて、(2)日本経済の特徴を明示化し、(3)政策遂行プロセスまで考慮するように分析を拡張している点にある。 多くの先行研究で様々な社会保障制度改革プランを提示して、厚生評価を行っている。それらの研究では外生的に政策を導入した結果、どの世代が得をして、どの世代が損失を被るかについて、数値計算を用いて計算する事が中心となっている。これに対して本研究では、政治的実行可能性にまで分析を進めている。例えば、将来世代の社会厚生を改善する政策が見つかったとしても、現在世代の過半数が反対すればその政策は実行できない事になる。そこで世代内及び世代間の経済格差が生じるモデル(保有資産量によって改革への賛否がわかれる)を用いて、制度改革に賛成する家計が社会全体のどの程度の割合になるのか、政治的実行可能性にまで踏み込んで分析を行った。 本研究の結果によると、社会保障制度は将来的には縮小方向に進むべきであるが、その実現には現役世代が反対する。2階部分(厚生年金部分)を廃止する代わりに1階部分を拡張して、その財源を消費税で賄うような制度改革は、将来の世代を改善しながら、政治的にも実行可能であることを明らかにした。
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