2008 Fiscal Year Annual Research Report
変数変換を伴う多変量時系列モデルの統計的推測と労働市場及びマクロ経済分析への応用
Project/Area Number |
19730155
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Research Institution | Otaru University of Commerce |
Principal Investigator |
寺坂 崇宏 Otaru University of Commerce, 商学部, 准教授 (60313920)
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Keywords | Box-Cox変換 / ARMAモデル / 漸近理論 |
Research Abstract |
本研究は、経済分析で多用されるBox-Cox変換を含む、変数変換を伴う多変量時系列モテルの数値推定法、推定量の漸近分布の導出およびその実証分析への応用の研究であるが、研究期間内に次の4点について成果を出した。 1点目は「修正Box-Cox変換を組み入れた多変量モデル(多変量ARMAモデル)」の次数および係数の推定方法を確立させたことである。確立した推定法では、モデルに経済変数が4個含まれる場合でも、短時間に推定することができる。これは、提案したモデルで実用的な経済分析を実行することが可能であることを意味する。2点目は、一般に変換を施して定常過程に従う時系列モデルの推定量の漸近分布について、理論的に明らかにしたことである。3点目は、2点目で導出された漸近分布の共分散行列は、解析的な評価が困難であるが、これをシミュレーションの方法で評価し、これを用いた検定方法を確立したことである。4点目は「修正Box-Cox変換を組み入れたARMAモデル」を使用して、4変数の経済変数モデルの実証分析を実施して、対数変換による推定について興味深い結論を導いたことである。具体的には1975年3月〜1999年1月までの日本のコールレート、鉱工業生産指数、マネタリーベース、名目実効為替レートの比率データの4変数モデルについて、一方は変換を対数変換に限定して推定し、もう一方は変換を限定しないで推定して、後者のモデルが前者のモデルと比較して統計学的に意味があるのかについて、提案した検定法により検証した。検定の結果、変換を限定しないで推定したモデルが、対数変換に限定して推定したモデルより統計学的に意味があるという結果が出た。本研究は、「修正Box-Cox変換を含む多変量時系列モデル」による統計的推測法を確立したこと、このモテルを使用した実用的な経済分析が可能になったこと、さらに実証分析で対数変換のモデルより優れた変換のモデルがあることを示したことで意義がある。
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