2007 Fiscal Year Annual Research Report
ダイナミックパネルデータモデルにおける、小標本特性に優れた統計的推論法の構築
Project/Area Number |
19730156
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
千木良 弘朗 Tohoku University, 大学院・経済学研究科, 准教授 (30447122)
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Keywords | 経済統計学 / 計量経済学 / パネルデータ |
Research Abstract |
本年度は、1階の定常AR(autoregressive)のダイナミックパネルモデルを考え、そのAR(1)パラメーターに対する小標本特性の良い推定量・検定統計量を構築した。その構築には、Kurozumi and Yamamoto(2000)のバイアス修正法を応用した。彼らのバイアス修正法は、推定量のバイアスがある条件を満たしていれば、非常に簡単に修正ができるのが特徴である。しかし、我々の研究の結果、ダイナミックパネルモデルに対する既存の推定量はその条件を満たさないことが判明した。そこで、我々は既存の推定量に修正を加えてその条件を満たすようにしてからそのバイアス修正法を適応し、バイアス修正推定量を構築した。推定法はGMM(generalized method of moments)なので、標準的なGMMを計算できる統計ソフトがあれば我々のバイアス修正推定量は容易に計算できるだろう。さらに、そのバイアス修正推定量の漸近分散共分散行列を計算し、それに基づく検定統計量を提案した。 我々の推定量・検定統計量の小標本特性はモンテカルロ実験で調べた。実験の結果、推定量のバイアスは、よく使われているBlundell and Bond(1998)のシステムGMM推定量に比べて小さいことが判明した。検定のサイズについても、システムGMM推定量に基づく検定より歪みが小さかった。検定のサイズを測る際には、システムGMM推定量にWindmeijer(2005)の修正を掛けたのだが、それでもなお我々の方がサイズの歪みが小さかった。また、実際のデータを使って簡単なダイナミックパネルモデルを推定したところ、AR(1)パラメーターに対するシステムGMM推定値は1を超えた。この結果は、システムGMM推定量に大きなバイアスがあることを意味する。これに対し、我々の推定値は1を超えなかった。これらのことから、我々のバイアス修正推定量は小標本特性が良いと言えるだろう。 --- 参考文献 Blundell, R. and Bond, S. R. (1998). Initial Conditions and Moment Restrictions in Dynamic Panel Data Models. Journal of Econometrics, 87, 115-143. Kurozumi, E. and Yamamoto, T. (2000). Modified Lag Augmented Vector Autoregressions. Econometric Reviews, 19, 207-231. Windmeijer, F (2005). Finite Sample Correction for the Variance of Linear Efficient Two-step GMM Estimators. Journal of Econometrics, 126, 25-51.
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Research Products
(1 results)