2009 Fiscal Year Annual Research Report
高頻度データによる金融市場のミクロ構造に関する研究
Project/Area Number |
19730159
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
森本 孝之 Kwansei Gakuin University, 理工学部, 専任講師 (80402543)
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Keywords | 市場のミクロ構造ノイズ / 高頻度データ / 実現共分散行列 / ランダム行列 / Tracy-Widom分布 |
Research Abstract |
本研究は,株式,為替あるいは金利といった現実の高頻度金融データを用い,日本の金融市場におけるミクロ構造の体系的研究を行うことを目的としている.平成21年度前半は,昨年度の中心的研究「金融資産の収益率過程に含まれる不連続な部分 (ジャンプ) の検出」の研究成果を日本統計学会和文誌に掲載出版した.平成21年度後半は,これまでの単変量日内高頻度データに対する分析を多変量に拡張することを研究の主題とした.特に高頻度データを用いることによって生じる市場のミクロ構造ノイズ (Market microstructure noise) を実現共分散行列 (realized covariance matrix) から取り除くより簡便かつ効率的な手法の開発を研究の目標とした.このミクロ構造ノイズを取り除く先行研究としては,交差積和行列を固有値分解しランダム行列の最大固有値よりも小さな固有値に対応する成分をノイズとみなし,それを除去する手法がある.しかし,既存の手法では,ランダム行列の最大固有値の漸近性を考慮せず,その収束値のみを用いるため,本質的なボラティリティを誤ってノイズとみなす危険性が定量的に評価されない可能性がある.そこで本研究では,ランダム行列の最大固有値は漸近的にTracy-Widom分布に従う性質を用い,共ボラティリティのノイズに対する統計的仮説検定を提案した.この提案手法を用いることにより,ノイズに影響されないより安定した実現共分散行列を推定することができた.
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Research Products
(4 results)