2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19730170
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
岩田 真一郎 University of Toyama, 経済学部, 准教授 (10334707)
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Keywords | 妻の通勤時間 / 妻の家事労働時間 / 妻の賃金 |
Research Abstract |
就業している既婚女性の通勤時間は,家事労働時間のため短いとされる.ただし,これらの時間は女性が自由に意志決定できるにもかかわらず,これまでの理論や実証研究の多くは,どちらか一方を外生的に扱ってきた.また,既婚女性の短時間通勤はパートタイム労働者については当てはまるかもしれないが,フルタイム就業者については当てはまらないかもしれない.なぜなら,高賃金を得るフルタイム就業者は男性同様通勤時間が長くなる可能性があるからである.これらのことを念頭に,本研究では正社員として就業している既婚女性の通勤時間が賃金の上昇とともにどのように変化するか,賃金上昇が通勤時間と家事労働時間のトレードオフ関係にどのような影響をもたらすかを理論的・実証的に分析した.理論分析の結果,通勤時間は賃金が上がり始めると,当初は長くなるが,やがて短くなることが示された.高賃金の妻が長時間通勤を嫌うのは,通勤時間によって失われる機会費用(賃金)を気にすると同時に家事労働時間を確保するためである.家事労働時間については,賃金が上昇するに連れ当初は減少するが,やがて増加していく.すなわち,低賃金と高賃金の間の妻は,長時間通勤のため,家事の労働生産性が低下し,家事労働時間を確保できない.この点は賃金の上昇が家事労働時間を一方的に減らすとする既存の理論分析と大きく異なっている.1993年度の『消費生活に関するパネル調査』の個標データを用いて,正社員の既婚女性の通勤時間と家事労働時間をそれぞれ賃金とその二乗に回帰したところ,通勤時間は賃金の上昇と共に増加するが,やがて減少に転じ,家事労働時間は逆のパターンにあることが示された.これらの結果は,上記に示した理論的な結果と整合的である.
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