2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19730176
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山本 和博 Osaka University, 大学院・経済学研究科, 准教授 (10362633)
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Keywords | グローバリゼーション / 技術革新 / 人的資本蓄積 / 所得格差 / 財の多様性 / 市場拡大 / 競争激化 / 経済厚生 |
Research Abstract |
グローバリゼーションと企業が行うイノベーション活動がどのように関連を持つかについての理論的研究を行った。グローバリゼーションの進展は、企業の利潤に二つチャンネルから影響を及ぼす。一つは、外国企業との競争の激化による利潤の減少、そしてもう一つは、外国市場への容易さの向上による利潤の増加である。本研究により、後者の影響が前者を上回る場合、具体的には外国営業所の設置が容易であつたり、マーケティングの費用が安く済む場合においては、グローバリゼーションの進展は企業の技術革新行動を促進させる事が明らかにされた。 さらに、グローバリゼーションと人的資本蓄積の関連についても理論的研究を行った。本研究が明にした事は、グローバリゼーションの進展により、人的資本蓄積は促進されるが所得格差は拡大することである。しかし所得格差の拡大は、経済厚生の向上とともに発生するため、グローバリゼーションを積極的に進展させる事が政策的には優れている事が、本研究により、明らかにされた。 以上、二つの研究が取り組んでいる課題は、今日急速に進んでいるグローバリゼーシヨンが企業、及び労働者に与える影響である。一般にグローバリゼーションは競争を激化させ、格差を拡大させる要因の一つと考えられている。しかし、グローバリゼーションに進展により、企業の立場から見ると市場の拡大による利潤の上昇があり、また労働者(消費者)の立場から見ると消費財の多様性の増加がもたらされる。本研究が明らかにした事は、これら二つの影響が大きい場合、競争の激化、及び所得格差の拡大を補ってあまりある経済厚生の上昇がもたらされることである。本研究により、様々な条件を吟味する必要はあるが、グローバリゼーションを積極的に展開する事が重要であるという政策的根拠が明示されていると考えられる。
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