2009 Fiscal Year Annual Research Report
環境R&Dと低公害型社会基盤形成のための競争政策についての理論・実証研究
Project/Area Number |
19730178
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
大内田 康徳 Hiroshima University, 大学院・社会科学研究科, 准教授 (40321517)
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Keywords | 環境R&D / 寡占市場 / 競争政策 / 投資 / ゲーム理論 |
Research Abstract |
最終年度は、理論面では排出権取引と排出税政策の制度設計と環境投資との関係に焦点を当てつつ分析を行った。まず,排出権取引では、上流取引と下流取引の制度比較を独占的競争モデルで行うことを期し,独占的競争市場において上流制度の理論モデルを構築して分析を試みた。具体的にいうと,石油元売企業1社とn個の石油消費企業から成る上流型排出権取引のモデルを構築し、排出権初期配分の配分が汚染削減量、石油消費原単位などの経済変数に与える影響を考察した。その結果、(1)排出権の初期配分がある一定水準までの大きい値であれば,石油抑制の最適投資水準は低い一定の水準となる。また,初期配分が減少するにつれて,最適投資水準は増加傾向を示すが,その増加傾向は初期配分がある一定の小さい値までしか続かない。初期配分がある値より小さくなると,石油抑制の最適投資水準は増加傾向を示さず一定値で止まる。その様な結果が生じる背景には石油が独占的に供給されている状態が影響している。(2)初期配分が十分小さい場合,初期配分を減少させても石油抑制投資が増加しないことから石油消費量の減少はもたらされない。つまり,初期配分の減少による石油消費量の抑制には限度がある。 さらに,前年度の拡張研究も試みた。政府が,n社の企業が数量競争を行う市場に対して排出税政策を実施する際に,政府が税率のコミットメント能力を持たない状況を想定して、均衡での汚染削減水準が社会的最善の水準に達するか否かの考察を行った。その結果,非協力投資の場合では社会的最善の水準には達しないが、協力投資の場合には社会的最善の水準を超える場合があることが判明した。 また、実証面では、日本、EU、米国、中国の間で、競争政策の成熟度、企業文化、国内事情の相違、統計データの整備状況、などでの差異が大きく統一した比較には困難を極め、今後も継続して分析を進め成果を発表したい。
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Research Products
(2 results)