2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19730186
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
篠崎 武久 Waseda University, 理工学術院, 准教授 (10361635)
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Keywords | 賃金格差 / 所得格差 / 主観的意識 / 経済政策 |
Research Abstract |
1990年代末から2000年代にかけて、日本では世帯の所得格差や個人の賃金格差などの経済的な格差に関心が集まっている。複数の先行研究によれば、a)世帯の所得格差は80-90年代を通じて拡大傾向にあること、b)所得格差の拡大は人口構成の高齢化による見かけ上の効果が大きいこと、などが明らかになっている。換言すれば、格差拡大は人口の年齢構成が変化したことによって引き起こされた見かけ上のものであり、実質的には格差は拡大していないことが指摘されている。ただし、高齢者には低所得者が多く、人口構成の高齢化が進んでいることを考えれば、数の上では貧困者が増大していることも指摘されている。 本研究では、統計上は格差拡大が観察されないこと、しかし格差が拡大しているという意識は高まっていることとの乖離の背景を検証すべく、以下の分析を実施した。つまり、i)2000年代半ばまでの統計資料を用いて所得格差や賃金格差の動向を再確認し、その要因を高齢化や高学歴化、地域や産業の視点から検証すること、ii)経済的格差に関する主観的な変数に着目し、格差拡大意識の背景を個票データの分析から明らかにすること、の2点である。 平成21年度は平成20年度に引き続き、格差拡大意識の背景について検証した。格差に対する意識、あるいは階層意識について調査したアンケートデータを活用し、格差に対する主観的な意識と個々の経済状態との関係について検証した。分析結果を報告できるよう作業を進めてきたが、意識と状態との間の関係を明瞭に捉えることが難しく、追加的な分析を進めているところである。研究成果の報告や公刊について当初の予定より遅れることになるが、出来る限り早く公表できるよう作業を進める予定である。
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