2009 Fiscal Year Annual Research Report
不確実性下における寡占企業の排出削減投資に対する環境政策の効果について
Project/Area Number |
19730189
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Research Institution | Osaka University of Economics and Law |
Principal Investigator |
前鶴 政和 Osaka University of Economics and Law, 経済学部, 准教授 (50351680)
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Keywords | 不確実性 / 環境政策 / 確率微分ゲーム / 排出量規制 / 越境汚染 |
Research Abstract |
本研究では、2国の生産活動が汚染物質を排出し、汚染物質が世界全体に蓄積されるような状況を想定した。また、汚染物質の蓄積過程に不確実性が生じるものとした。そのような状況で、各国政府間で行われる排出量ゲームを確率微分ゲームの枠組みで分析し、Markov完全ナッシュ均衡解および協調均衡解を導出した。協調均衡解では、各国の社会厚生に(交渉力の相対的な大きさを表す)ウェイトを付した加重和の期待割引現在価値を最大化するような解を導出した。また、サブゲーム整合性を満たす配分方式について分析した。 本研究の分析によって、以下のようなことが明らかになった。ナッシュ交渉解を用いて、各国政府が協調行動に合意し、協調均衡における利得を分配する配分方式を示し、さらに、その配分方式によって得られるサブゲーム整合的な協調均衡解を導出した。その結果、市場規模や生産技術水準を表す便益関数のパラメータを比較し、より大きな市場規模や生産技術水準をもつ国の方がより大きな瞬時の利得を得ることによって、サブゲーム整合解が与えられる、ということが分かった。また、協調均衡解において各国の社会厚生に付されるウェイトが各国のもつ相対的な交渉力の大きさを表すと考えた場合に、市場規模や生産技術水準が大きな国の交渉力が高まれば、環境問題に関して各国が協調した場合に両国政府全体の価値関数が増加し、サブゲーム整合解における配分が両国ともに増加することが明らかになった。 現実の世界では、環境問題の解決に関して国際交渉が行われているが、その際には先進国と発展途上国の対立がある。本研究の結果によれば、世界全体の利益を高めるためには、先進国が利益を発展途上国に対して適切に配分するための配分方式の構築が必要である。そのような配分方式により、発展途上国の利益も確保しながら、世界全体の環境問題の解決を図ることが可能であると考えられる。
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Research Products
(6 results)