Research Abstract |
本研究課題では、産業クラスターに属している様々な経済主体間の相互作用のメカニズムを有効に機能させ、地域発展に寄与させていく制度設計に繋がる政策提言を志向している。具体的には,日本,韓国,中国における産業集積(産業クラスター)地域で,情報通信技術を核として,イノベーションに基づく生産・サービス活動を展開している企業を調査対象として,各企業の産学官連携をはじめとする企業ネットワークのあり方を調査し,イノベーションと産業集積の関係を探ることを研究目的としている。 平成19年は,1)内外の先行研究の整理を行った。2)調査地域の特定のために聞き取り調査を重点的に実施し,一部の地域では,実際にアンケート調査を行った。 1)に関して,都市経済学や空間経済学の視点から,イノベーションに関する地理的な要因を検討した。イノベーションと産業集積の関係に何らかの因果があるならば、当該地域に立地している経済主体間の相互作用が知識波及を媒介にどのような形態(経路)で機能しているのかを追究していく必要がある。これらの要因を追究していくためには,都市経済学や空間経済学に,産業組織論の視点(例えば,Suzumura(1995)で議論されている共同研究がR&Dを促進するか,過小にするかという理論分析)を入れていくことで,従来の研究とは異なった仮説を提示できることがわかった。このことに関する議論の詳細の一部は,亀山・浜口(2007),Hamaguchi and Kameyama(2008)として刊行した。これらの議論は,今年度以降,具体的に計量経済分析を実施していく上で,モデルの特定化で有効なものとなるであろう。2)に関して,調査対象地域を,日本=北九州,長野,韓国=始華,中国=中関村に特定し,一部の地域で調査を行った。現在,回収した情報の精査を行うとともに,今年度の企業調査のための質問を設計している段階である。
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