2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19730205
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Research Institution | Hokkai-Gakuen University |
Principal Investigator |
逸見 宜義 Hokkai-Gakuen University, 経済学部, 准教授 (10364225)
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Keywords | 人的資本 / 教育 / 不確実性 / 過剰投資 |
Research Abstract |
個人の能力に関して不確実性がある下での教育投資について,Oshio and Yasuoka (2009)のモデルに修正を加え分析を行った.モデルの概要は次のとおりである. 2タイプの能力(High-skilledとLow-skilled)の個人が存在する経済を考える.この能力は個人および企業にとって不確実性な側面を保有する.教育投資は時間のみを用いて行われ,教育を途中で終了した個人はLow-skilledとして所得を得る.まず個人にとって自分の能力は教育と通してのみ明らかとなる.したがって教育の初期段階においては教育による便益は期待値としてしか知ることはできない.またLow-skilledを用いた業種においてはその仕事の性質から労働者がどちらのタイプであるのか知ることはできない.しかしHigh-skilledを主に用いる企業では,仕事を通じその能力が明らかになると考えられ,労働者はその能力に応じた賃金を受け取る.このような仮定の下どのような教育投資が行われるかを分析した.High-skilledの個人は教育を通じて期待所得が増加し,Low-skilledの個人は期待所得は減少していく.したがって教育終了時点までの機会費用が,教育による所得増加の期待値を下回っている場合のみ,個人は教育を継続する誘因がある.教育投資を論じる際,教育によりどのようなスキルが蓄積されるかという点に着目されがちであるが,教育をいつ辞めるかという選択行動を分析する際には,Low-skilledとして能力がどのように形成されるかが重要であることを本研究は示唆している.高等教育による能力形成の面のみではなく,教育と途中終了場合の能力形成についても分析していくことの重要性が示された.
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