2009 Fiscal Year Annual Research Report
経済成長・不平等・貧困における因果関係及びその経路に関する研究
Project/Area Number |
19730208
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
西山 朗 Keio University, 総合政策学部, 准教授 (60374154)
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Keywords | 経済成長 / 不平等 / 貧困 / ジェンダー / 経済発展 |
Research Abstract |
本研究の研究業績として、2編の研究論文を英語論文として完成させた。大幅な加筆修正を繰り返してクオリティを引き上げ、2009年11月に、湘南藤沢学会ディスカッションペーパーとして発表した。同時に、それら2編の論文は、すでに欧米の査読つき学術ジャーナルに投稿済みであり、現在それらの結果を待っている段階である。 1)The asymmetrical impact of economic growth on infant mortality in developing countries 1人当たりGDPが乳児死亡率に与える影響を、発展途上国83カ国の過去40年間のデータに基づき、計量経済学的に分析した。推計結果によれば、全体としては経済成長が乳児死亡率を引き下げるが、経済成長が乳児死亡率に与える影響は、好況期と不況期において、非対称である。経済成長率が正である期間(好況期)においては、経済成長は乳児死亡率にあまり影響を与えない。しかし、経済成長が負の期間(不況期)においては、経済状況の悪化は、乳児死亡率に甚大な悪影響を与える。これらの計量経済学的証拠は、既存の文献における経済成長と貧困削減についての見解の相違が、それらの文献が分析する期間や地域が経験してきた経済成長が正か負であるかの違いによって生み出されてきている可能性を示唆している。 2)Female Schooling and economic development 既存のクロスカウントリー分析の中では、女性の学校教育と経済発展の間に弱い関係しか存在しないことが示されてきている。この不可思議な証拠は、開発経済学者を悩ませてきた。パネルデータ分析を用いる本研究が明らかにしたのは、女性の学校教育が経済発展に弱い効果しか持たないという既存の統計学的証拠が、女性の学校教育特有のものではなく、学校教育そのものが経済発展に大きな効果を持たないという側面を映し出しているということである。同時に、女性の学校教育によってもたらされるであろう女性の社会的地位の向上が、乳児死亡率低下に貢献することも、重要な結論の一つである。
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Research Products
(3 results)