2010 Fiscal Year Annual Research Report
インドネシアにおける多国籍企業の活動変化と賃金水準との関連性の統計分析
Project/Area Number |
19730212
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Research Institution | Tokyo International University |
Principal Investigator |
瀧井 貞行 東京国際大学, 国際関係学部, 准教授 (60311320)
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Keywords | 経済政策 / 多国籍企業 / インドネシア |
Research Abstract |
インドネシア中央統計庁が実施している産業統計の個票データを用いて,高学歴従業者と低学歴従業者に対する相対的な需要動向と,相対賃金に関する分析を行い,1996年のデータを用いた結果と,2006年のデータを用いた結果の比較を行った。まず,学歴別従業者の相対的需要については,特に生産労働者において高学歴従業者の相対需要が高まったという結果が得られた。また,比較的に多くの高学歴従業員を雇っている事業所は,他と比較して,産出高で見た事業所規模が大きく,また労働生産性も高い。また,このグループの特徴として,グループ内に比較的に多くの外資系事業所と輸出している事業所が含まれている。このことは,外資系事業所の参入に伴い,高学歴従業者の相対的な需要が高まることによって,特に外資系企業が比較的多く参入する産業において賃金水準が上昇したことを示唆するものである。 次に,高学歴従業者と低学歴従業者の相対賃金が相対的限界生産性に等しいかどうかの統計的な検証を行った。これは,最低賃金の上昇や経済危機後の混乱等の経済環境の変化の中で,各事業所の労働者の配分効率性を維持する能力を検証するためである。分析により,1996年時点においては,理論的な効率的配分状況と比べ,低学歴従業者の方が相対的に高めの賃金が支払われていたことを示唆する結果が得られた。これに対して,2006年においては,外資系事業所が多く存在する産業グループでは,相対賃金と相対限界生産性が等しいという仮説は棄却されなかった。このことは,外資系企業とそれに競合する地場系企業はより雇用調整を行う能力があることを示唆している。日系事業所を対象に分析を行った結果も同様であった。
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