Research Abstract |
平成19年度は,電力市場の自由化と電気事業の効率性に関する内外の先行研究のサーベイを行った上で,わが国の電力市場を評価するための各種のデータの収集を行い,小売市場における競争環境の評価や電力会社(一般電気事業者)の料金の変化について分析した。わが国の電力小売市場の競争環境に関しては,政府関係機関が実施している電力調達入札に着目し,新規参入者の応札動向に関する実証分析を行った。その結果,新規参入者は,負荷率の低い案件や契約規模の大きい案件,および関東地区や近畿地区で積極的に応札していることが明らかとなった。諸外国で同様の事例を分析した研究は存在しないため,日本の電力市場における競争の促進を考える上で貴重な分析結果が得られたと考える。また,わが国電力市場の競争環境に影響を与えると考えられる産業用大口需要家の自家発自家消費に着目し,産業別に電力価格に対する自家発自家消費比率の弾力性などを推定した。その結果,紙・パルプ産業などに比べて機械産業で価格弾力性が高いことなどが明らかとなった。自家発電の経済分析については,その重要性にも関わらず,日本では実証研究があまり蓄積されてこなかったので,電力会社に対する自家発電からの競争圧力を議論する上で貴重な成果が得られたと考える。最後に,日本の電力市場における様々な潜在的競争圧力が,電力会社の料金設定に及ぼす影響について,予備的な実証分析の結果を内外の学会で発表し,今後の課題等について検討を行った。潜在的競争圧力として,具体的には,自由化対象部門の需要家の存在,自家発電の存在,他の電力会社の存在を考え,いずれも電気料金の効率化に一定の効果をもたらしたことを確認した。
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