Research Abstract |
地方公共団体の行財政運営は,住民が選挙を通じて監視するものと理念的には考えられているが,地方選挙(などの自治システムが)が地方財政を制御できなかった実態(夕張市の破綻など)を踏まえ,国は「地方財政健全化法」を設けて制度的監視を強化したものと解釈できる. しかしながら,地方選挙を通じた住民による監視機能についての定量的考察は,市町村データを時系列的に取り扱ったものとなると筆者は存じない.そこで,本研究の具体的な目的は,福岡県下の市町村について,1970年から2004年の間に実施された地方議会選挙および地方首長選挙の結果を考察し,地方選挙と地方財政の関係を定量的に明らかにすることである. 研究当初は軽視していた外縁的な論点のうち,地方交付税制度による財政調整機能のあり方や,「足による投票」(選挙は「手による投票」)の実態分析の必要性を再認識し,「足のよる投票」を題材とした考察については,国内学会・国際学会や海外でのワークショップで報告を行うと伴に,成果の1つは学会発行の書籍に掲載される予定である(校正中). 同様に,夕張市の破綻,財政健全化法の制定,市町村合併と道州制論の進展など,地方自治体をとりまく環境の変化が激しいため,研究成果の現代的な位置づけを行うプロセスの中から,合併や道州制などについて検討し,論文として公表した(〔雑誌論文,下段〕を参照). こうして,わが国における分権改革の行方を意識しつつ,「足による投票(exit)」と「手による投票(選挙,voice)」という地方自治体における複眼的な監視機能を包括的に議論する材料が整えられつつあると考えている. ただし,上記2つの監視機能以外に地方制度調査会でも議論された内部監査もあるが,この点については本研究の射程外としておきたい.
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