2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19730223
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
清水 克俊 Nagoya University, 大学院・経済学研究科, 准教授 (80292746)
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Keywords | 流動性 / 量的緩和政策 / 短期主義 / 自己資本比率 / 金融システム / 金融危機 |
Research Abstract |
短期主義と呼ばれる傾向が市場の不安定性をもたらしているのではないかというテーマのもと、本年度は2001年から2006年まで行われた日本銀行の量的緩和政策が金融危機の解決において果たした役割について実証分析を行った。金融危機において、銀行は長期的な収益を犠牲にして、短期的な安全性を確保するため流動性を保有しようとする。銀行は将来資金調達が困難になることを恐れて、流動資産を保有する。量的緩和政策は、金融市場に代わって流動資産を供給するという点において意義があった。実証分析は、日本の地方銀行等のパネルデータを用いて、同時方程式を用いて行った。これは、流動性保有、貸出額、国債の3つのポートフォリオ構成比率を銀行が同時に決定すると考えられるからである。流動性需要を被説明変数とする第一の方程式においては、自己資本比率が低い銀行や不良債権比率の高い銀行がより多くの流動性を保有しているかどうかを検証した。その結果、自己資本比率の低い銀行ほど多くの流動性を保有する傾向が確認された。貸出額を被説明変数とする第2の方程式においては、十分な流動性を確保できた銀行が貸出額を増加させたかどうかをを検証した。2002年度と2005年度においては正の影響を確認できたが、2003年度と2004年度においては有意な影響を確認することはできなかった。これによって2003年度と2004年度における流動性の供給は余分なものであったことが示唆された。また、副次的な結果として、日銀当座預金残高自身は重要な変数ではなく、それに現金残高やコールローンなどの流動資産を付加した流動性指標のほうが意味のある変数であったことがわかった。以上から、流動性の罠に陥った経済における金融政策運営について重要な示唆を与えることができたと考えられる。
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