2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19730223
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
清水 克俊 Nagoya University, 大学院・経済学研究科, 准教授 (80292746)
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Keywords | 銀行破綻 / 伝播 / 短期主義 / 自己資本比率 / 金融システム / 金融危機 / 情報の非対称性 / 市場規律 |
Research Abstract |
本年度は預金者の短期主義的行動が銀行行動にどのような影響を与えるか、預金者の短期主義的な流動性需要がどのような要因によって引き起こされるかを理論的に考察し、後者については日本の信用金庫のデータを使って実証的に分析した。情報生産コストを節約するための他人の行動からの学習行動は危機の伝播を招く可能性がある。銀行破たんが近隣銀行の預金引出をもたらしたという結果を報告しているSaunders and Wilson(1996)に基づき、危機における地方銀行の株価下落が近隣の信用金庫の預金引出につながったかを実証的に分析した。2001年度の319行の信用金庫の預金変化率を被説明変数とする回帰式を推定した結果、近隣の地方銀行の株価変化率は有意に正の影響を及ぼしていた。これは、信用金庫の預金者が地方銀行の株主の行動から学習したことを意味する。また、信用金庫の自己資本比率などのファンダメンタルズも預金者の行動に有意な影響を及ぼしていた。このようなことから、金融危機における人々の短期主義的な預金引き出し行動は一定の合理性を有していると考えることもできるが、金融危機における政策的対応を考える上では一定の考慮が必要であるということが示唆される。
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