2008 Fiscal Year Annual Research Report
部分的な地方分権での財政競争と財政援助に関する理論的・実証的研究
Project/Area Number |
19730232
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
菅原 宏太 Kyoto Sangyo University, 経済学部, 准教授 (90367946)
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Keywords | 財政分権化 / 財政競争 / 財政援助 / 政府規模 |
Research Abstract |
本研究の目的は, 第一に中央政府による財政援助と地方政府間での財政競争との連繋構造を理論的に明らかにすることであり, 第二にその連繋が日本の事例において成り立つかどうかを実証することである。 これらの目的のうち, 本年度は主に実証分析に重点を置いた。具体的な内容は, 非対称な財政競争モデルを基にして、財政分権化の地方自治体の財政競争行動への影響を推定することである。このために、次の三段階で研究を進めた。第一に、先行研究を参考にして中央政府の歳出を都道府県レベルに按分し、それと都道府県歳出を用いて各県の財政分権度指標を作成した。次に、その指標を財政競争モデルの実証分析に用いることで、財政分権度が財政競争行動に与える影響について推定した。最後に、財政分権度と財政規模との関係を実証分析した。 分析結果からは次のことが明らかにされた。第一に、特に補助金財源を含めて計測した分権度指標によると、都市圏よりも地方圏の都道府県において財政分権がより進んでいる。第二に、補助金を含む財政分権は財政競争を助長しており、その効果を取り除くと地方圏自治体のみが財政競争を行っている。第三に、地方圏において、財政分権化は直接的のみならず、財政競争を通じて間接的にも政府規模を大きくしている。 以上より、歳出面の分権化が先行している日本においては、先行研究とは異なり、地方分権が政府規模を大きくしていると計えよう。そしてそれは、特に地方圏において財政競争を助長する形でもたらされているおり、財政援助による過当競争の可能性がうかがえる。
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