2007 Fiscal Year Annual Research Report
最適課税理論の再構築 -所得税と消費税の最適な組み合わせとその構造
Project/Area Number |
19730233
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
小川 禎友 Kinki University, 経済学部, 准教授 (30330228)
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Keywords | 最適課税理論 / 所得税 / 消費税 |
Research Abstract |
本研究の目的は,所得税と消費税の最適な組み合わせとその構造を明らかにすることである.学術的な特徴は,効用関数に弱分離性等の特殊な仮定を置かずに最適問題を解き,最適所得税の累進度,各財に対する最適消費税率の順位,最適な消費・所得税収比率を調べることである.非線形の所得税の場合,予定されたとおり,最適な所得・消費税構造を解析的に明らかにすることは非常に困難であった.しかし,一般的な効用関数の場合,最適解としての消費税率はゼロにならず,所得税と消費税の両方が必要であることを確認できた. これ以上の解析的な結論を得られない可能性を考慮し,シミュレーション分析を行う準備をしている.その場合,応用一般均衡モデルを使ったシミュレーション分析が最も効果的である.しかし,応用一般均衡モデルは,CES効用関数,コブ・ダグラス効用関数等の弱分離性を伴う関数を通常使用するので,従来の結論と同じになってしまうことが明らかになった.今後は,応用一般均衡モデルに適応し,かつ分離性を伴わない新しい効用関数を見出すことが重要になる. 従来の最適所得税理論では、すべての家計が労働を供給をすることを前提としていた.しかし,調査・聞き取りによって,労働を供給しない,つまり所得がゼロになってしまう家計が少数でないことがわかった.労働を供給しない家計が存在する場合,労働供給する家計に課す所得税にどのような影響を及ぼすかを分析することも重要である.この分析も困難を伴うかもしれないが,現実を直視すれば避けられない課題であろう.
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