2008 Fiscal Year Annual Research Report
植民地経済の運営と官民の認識-植民地台湾像の再検討-
Project/Area Number |
19730241
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Research Institution | Nagoya Gakuin University |
Principal Investigator |
河原林 直人 Nagoya Gakuin University, 経済学部, 講師 (90434589)
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Keywords | 経済史 / 台湾史 / 植民地 |
Research Abstract |
平成20年度に実施した主な作業は次の通りである。 前年度の台湾調査の結果, 「臨時産業調査会」, 「熱帯産業調査会」, 「臨時台湾経済審議会」に関する直接的な一次資料がほとんど存在しないことが確認されたため, 国内での関連資料の収集を行った。基本的には国立国会図書館や千代田図書館等の公共図書館に所蔵されている台湾及び台湾総督府官僚の記録を精査した。これについては全国を網羅的に調査したわけではないために万全とは言いがたい。それ故, 次年度も継続的に補完したい。 また, 具体的な検証・考察については, 交付申請書に記した通り「臨時台湾経済審議会」に焦点を当てて論考(「植民地官僚の台湾振興構想-臨時台湾経済審議会から見た認識と現実-」)をまとめた。これは国際日本文化研究センター共同研究班の研究成果でもあり, 本年度末に共著が上梓された(研究発表の項目を参照のこと)。本論考で明らかになったことは, (1)日本本国の経済と植民地台湾のそれが必ずしも目的を一致させていないこと, (2)それに伴う政策主体の政策スタンスの違いが明確に現れていること, (3)官僚主導の経済振興策に対する民間の懐疑的な態度や反発である。従来の研究では植民地統治機構による政策が極めて強制力の強いものと認識され, 民間側は黙って従うだけのような認識がうかがえたが, そうした理解が一面的であることを指摘するに足る傍証ができた点は, 今後の台湾経済史研究における新しい視点を提供し得たと考えられる。
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