2010 Fiscal Year Annual Research Report
産業革命期イングランドにおける生活水準:貧困と経済犯罪
Project/Area Number |
19730244
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
山本 千映 大阪大学, 経済学研究科, 准教授 (10388415)
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Keywords | 数量経済史 / 生活水準 / 貧困 / 犯罪 / 労働市場 |
Research Abstract |
スタッフォードシャー州文書館所蔵の四季裁判所記録(Calendars of Prisoners)について、1781年から1851年までの期間について10年ごとに区切ってデータベース化を完了した。また、データを地図上に落とす作業として進めてきた1851年センサスの調査区(Registration District(RD))を基礎とするGISマップの作成作業も完成し、スタッフォードシャー内の教区レベルで、数値マップを作るためのフォーマットを作成した。 四季裁判所記録データベースに記載された被害者の氏名と連結するため、18世紀末から刊行されている商工人名録もデジタル化した。具体的には、1780年、1793-8年、1818年、1851年の四つの商工人名録を用い、ウォルヴァハンプトンに範囲を絞って、被害者の出自を可能な限り、明らかにした。ちなみに、ウォルヴァハンプトンは、19世紀中期においてはスタッフォードシャー最大の都市であり、英国全体でも第9位にランクされている。 四季裁判所データベースから窃盗について分析すると、盗品として、貨幣に加えて、石炭やパン、家禽などが数多く見られ、下層の人々にとっての生きるための手段としての窃盗という側面が浮かび上がった。同時に、少なくともウォルヴァハンプトンにおいては、盗品の高級化の傾向も見られる。シルク製品や時計、銀器といったものの出現頻度は、時代を追って高まる傾向にあり、都市のミドルクラスの生活水準の上昇を示唆していると考えられる。 これらの発見事実は、一部は、他の研究者との共著として(次ページ参照)、他の部分は、個別論文として、現在執筆中である。
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