2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19730278
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
加藤 厚海 Hiroshima University, 社会科学研究科, 准教授 (10388712)
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Keywords | 経営学 / 産業集積 |
Research Abstract |
本研究の目的は、産業集積内部の制度的慣行(暗黙的ルール・規範)を解明することであった。 フィールド調査を行ってきた素麺産業の産地では、各産地において、産地組合のマネジメントが大きく異なっていることが明らかとなってきた。産地組合を中心となって協働していく龍野産地では、産地組合による強い結束によって、品質競争は行わせるが、価格競争はさせないことを徹底していた。そして、協働しない業者に対しては除名などの形で、強い制裁を加えることで結束をはかってきた。一方で、産地問屋主導で競争を促していく三輪産地では、部分的には品質競争をしているのであるが、近年は価格競争にシフトしつつあることがわかった。三輸では産地組合の力が弱く、産地問屋は結束することは難しく、バラバラで動いている。さらに、その三輪産地の下請的存在であった、島原産地では、組合が分裂を繰り返してきた結果、多数の協同組合が乱立し、産地内では製造業者が結束して協働していくための規範が確立していないことがわかった。その結果、特に不況期になると供給過剰となって、価格競争が激しくなり、結果的には産地全体が疲弊しているということも明らかとなってきた。このように産業集積では、各プレイヤーの利益だけではなく、産地全体の利益を考えて協働していく仕組みをもっているかどうか(特に協同組合のマネジメント)が重要であり、そのためには品質競争を促しながらも、価格競争を抑制させるための規範づくりが重要であることが明らかとなった。 同様に、金型産業の産業集積では、同業者から成り立つ仲間型取引ネットワークを活用することによって、需要変動に対応していることがわかった。そして仲間の間では、品質競争を促しながらも、価格競争をさせないように、各プレイヤーの機会主義的行動を抑制する機能が、仲間型取引ネットワークにあることも明らかとなった。ここでは産地内の取引システムによって、協働を促していることを明らかにしたことによって、産業集積の制度的慣行を事実レベルにまで掘り下げて議論したという点で、大きな意義があると考えられる。
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