2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19730285
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
中山 雄司 Osaka Prefecture University, 経済学部, 准教授 (20326284)
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Keywords | 空間的競争モデル / 垂直的差別化モデル / 電子商取引 |
Research Abstract |
まず, 前年度から取り組んでいた研究をまとめた論文"The Impact of E-commerce : It always benefits consumers, but may reduce social welfare"が学術誌Japan and the world economyに掲載予定となった。この論文では, 何らかの理由で電子商取引を行うことができない消費者も世の中には一部存在するという状況を考えている。分析の結果, 電子商取引の登場は小売市場の競争性を高め, 消費者余剰を増やすという意味で, 全ての消費者にとって望ましいことが分かった。ただし, 世の中全体にとっては, 市場規模全体に占める電子商取引の割合が小さいならば, 電子商取引の登場は必ずしも社会的余剰を増加させない, 場合によっては減少させるという意味で社会的に望ましいとは限らないことも分かった。小売市場の競争性が高まり, 電子商取引を行う業者も含む全小売業者の利潤の減少が大きいというのがその理由である。次に, 論文「音楽CDと音楽配信サービスの競合 : 垂直的差別化モデルを用いた分析」を2008年度日本応用経済学会秋季大会で報告した。本論文では垂直的差別化モデルを用いて, 音楽CDを高品質財, 音楽配信サービスを低品質財とみなしてそれらの競合を分析した。既存文献とは異なり, 高品質財企業は数量を戦略変数とし, 低品質財企業は価格を戦略変数として行動すると仮定した。分析の結果, 低品質財企業の参入が市場の競争性を高め, 高品質財の価格を低下させ, 市場全体の総数量が伸びること, 高品質財の市場は小さくなる場合も大きくなる場合もあることが示された。また, 社会的余剰は高品質財のみの場合よりも必ず増加するが, 低品質財企業が数量競争を行う場合と比較すると, 小さくなる場合があることが示された。
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