2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19730300
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
中川 豊隆 Okayama University, 大学院・社会文化科学研究科, 准教授 (70403467)
|
Keywords | 決算発表ドリフト / キャッシュフロー / インフレーション錯覚 |
Research Abstract |
平成19年は、決算発表ドリフト(announcement drift)に関する先行研究をサーベイしたが、特に、Chordia and Shivakumar(2005)が提唱するインフレーション錯覚仮説(inflation illusion hypothesis)について詳しく検討した。なお、この他の主要な先行研究のサーベイは、すでに中川豊隆「ポストアナウンスメントドリフトとキャッシュフロー」『岡山大学経済学会雑誌』2006年で行っている。インフレーション錯覚仮説とは、株式投資家が将来の利益成長を予測する際にインフレーションの影響を正しく織り込めていないために、インフレーションと利益成長との間にプラス(マイナス)の関連性を持つ企業の持分が過小評価(過大評価)されるという仮設である。一方、決算発表後ドリフト(post-announcement drift)は、投資家の合理性に限界があるもしくは実証研究を行う際のリスク調整示不完全であることによって生じるとされている。インフレーション錯覚仮説は前者の領域に属する仮説であり、投資家がインフレーションの影響に錯覚(インリュージョョン)をいだくことにより決算発表後に株価ドリフトが生じると説明される。彼らはインフレーションの規模が大きくなるにつれて標準化期待外利益にもとづくポートフォリオリターン間での将来の利益成長の差が拡大することやインフレーションが将来のポートフォリオ間のリターンの差と関連性を持つことを実証した。このような実証研究は、デフレや資源価格の高騰などが日本企業の財務情報と株価との関連性に及ぼす影響を考える上で重要な示唆を与えるものであると考えられる。よって、平成20年度以降は日本企業を分析対象として、インフレーション錯覚仮説も視野に入れながら決算発表ドリフトを検証する予定である。
|
Research Products
(1 results)