2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19730300
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
中川 豊隆 Okayama University, 大学院・社会文化科学研究科, 准教授 (70403467)
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Keywords | 決算発表ドリフト / 財務情報の有用性 |
Research Abstract |
平成21年に実施した2006年から2008年までの期間を対象としたヘッジポートフォリオ分析では、3年間をプールした場合には利益及びキャッシュフローについて決算発表後ドリフトは観察されないが、年度別に検証を行ってみると、2007年については、決算発表前ドリフトだけではなく決算発表後ドリフトも観察された。しかしながら、この分析結果は月次ベースでの検証であり、限定的な意味しか持たないと考えられる。そこで、今年度は、同一の企業年度を対象として日次ベースの分析を行って、昨年度に得た分析結果について再度検証することとした。日次株価にもとづいて決算発表日の前後60日間の異常リターンを計算したところ、決算発表前ドリフトほどの程度ではないものの、財務情報にもとづいて形成した第10ポートフォリオの異常リターンの平均値が第1ポートフォリオの異常リターンの平均値よりも有意に大きいことが観察された。この分析結果は、分析対象が2007年度のみであるという意味で限定的な証拠ではあるが、市場の環境によっては決算発表後の投資意思決定に実績情報としての財務情報がより多くの有用性を持ちうることを示唆しており、この点に財務情報の有用性という観点からの学術上の意義が認められる。また、本研究の結果は、例えばXBRLの導入の影響を決算発表ドリフトという視点から検証するなど、財務情報のディスクロージャー制度がいっそう整備される中で、今後の財務情報の有用性研究における重要な研究手法となりうる点でも重要性を持つと考えられる。
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