2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19730307
|
Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
若林 公美 Konan University, 経営学部, 教授 (20326995)
|
Keywords | 包括利益 / 純利益 / 価値関連性 / 持続性 / 予測可能性 / 利益調整 / 投資リスクの評価 / コンバージェンス |
Research Abstract |
本研究の目的は、会計基準のグローバル化の流れのなかで導入が検討されている包括利益と、損益計算書のボトムラインである純利益という2つの異なる業績指標を優劣比較し、いずれの利益概念が業績指標として優れているのかを実証的に検証することである。本研究では、価値関連性のみならず、持続性、予測可能性、投資リスクの評価、利益調整などの複数の尺度に基づいて、総合的に包括利益と純利益を比較検討した。 まず、持続性と予測可能性の分析では、純利益のほうが包括利益よりも、持続性と予測可能性が総じて高いことを示した。次に、投資リスクの分析では、包括利益よりも純利益の標準偏差のほうが投資リスクの評価に優れていることを、また、価値関連性の分析では、包括利益よりも純利益のほうが株式リターンとの関連性が優位に強いことを示した。さらに、経営者は包括利益ではなく、純利益に対して利益調整を行うことも明らかにした。そして、純利益に対する利益調整を所与とした場合においても、包括利益よりも純利益のほうが価値関連性が高いことを析出した。 このように、本研究の発見事項は、総じて包括利益よりも純利益のほうが優れた業績指標であることを裏付けるものであった。また、包括利益をその構成要素である純利益とその他の包括利益に区分すると、包括利益のみを開示するよりも、その有用性が高まる点も明らかにされた。本研究は、純利益と包括利益を併せて開示し、純利益を独立した業績指標として維持することに大きな意味があることを示している。これらの発見事項は、今後、包括利益の会計基準を設定する上で、貴重な証拠を提示するものであり、本研究の成果として、「包括利益の実証研究」が2009年9月に中央経済社から刊行された。
|
Research Products
(2 results)